借地権の売却を考えている人ならば、実際に売却する際の売却相場は気になるところでしょう。ここでは、借地権売却の基礎知識と相場の計算方法について解説します。借地権の種類についても解説していますので、参考にしてください。
借地権とは、土地を借りられる権利のことです。家を建てる時、土地を地主から借りる際に得られます。地主が持っている土地を借りて家を建てる場合は、土地と建物を購入する場合と異なり借地権と家を購入する形になります。
そのため、家の売却や引っ越しに伴って土地を借りる必要がなくなった場合、購入した借地権の売却が可能です。しかし、借地権の売却には地主の承諾が必要です。地主が売却を承諾しなければ、借地人が独断で借地権を売ることはできません。
また、売却価格も地主によって異なります。売却承諾時に提示される条件が異なるため、自身が所有する建物や土地のように明確な売却相場はありません。
借地権の売却相場は明確に決まっていません。しかし、相続税や固定資産税の評価額を計算することはできます。借地権の売却金額を計算する場合、多くの場合は土地の相続税や評価額を参考にします。
ただし、実際の売却金額は地主の条件によって異なるため、あくまでも目安として捉えてください。
借地権の売却相場は「自用地評価額×借地権割合」で算出します。自用地評価額とは、借地権が付いていない場合の土地の評価額のことです。自用地評価額は地域によって求め方が異なるため、国税庁が定める「路線価図・評価倍率表」を参考にしてください。
借地権割合は、土地に対して借地権がどれほどの割合を占めているかを示す数字のことです。
自用地評価額と借地権割合がわかれば、「自用地評価額5,000万円×借地権割合50%=2,500万円」というように相場を導き出せます。
借地権には平成4年7月31日以前に締結された旧借地権と、新法によって創設された定期借地権の2種類があります。2つの借地権の違いは以下の通りです。
【種類】 | 【契約更新】 | 【建物買取請求権】 |
---|---|---|
旧借地権 | 30年以上 | あり |
定期借地権 | 更新なし | なし |
定期借地権では契約更新ができず、建物買取請求権がありません。そのため、定期借地権では契約終了後に土地返還を条件に地主に建物を買い取ってもらうことができなくなりました。借地人は契約終了後に、建物を撤去して土地を原状回復した状態で返還する必要があります。
借地権の売却時には費用と税金がかかります。何にどれくらいの費用が必要になるのか、それぞれ確かめておきましょう。
借地権を売却する場合、以下の2つの費用が必要になります。
・ 解体費用
・譲渡承諾料
借地権だけを売却する場合は、土地を更地に戻して売却します。なお、地主に借地権を買取ってもらう場合は、解体して売却するのが基本です。
建物の解体費用は、建物の構造や坪数、立地によって異なります。建物構造によっての1坪あたりの解体相場は以下の通りです。
・木造:30,000円~50,000円
・鉄骨造:40,000円~60,000円
・鉄筋・鉄骨鉄筋コンクリート造:60,000円~80,000円
あくまでも建物構造ごとの相場のため、実際の費用は解体業者で見積もりをとって確認しましょう。
借地権を地主以外の第三者に売却する場合は、譲渡承諾料が必要になります。譲渡承諾料とは、地主に売却の許可を得る際に支払う費用のことです。承諾料は地主との交渉で決まりますが、一般的な相場は借地権の成約価格の10%です。
成約価格に対して譲渡承諾料が高すぎる場合は、地主に相場を示したうえで交渉するとよいでしょう。
借地権の売却時には、譲渡所得税がかかります。譲渡所得税とは、所得税と住民税の総称です。譲渡所得税は、借地権を売却したことで得られる譲渡所得によって異なります。
譲渡所得の計算方法は、借地権の売却価格から「借地権購入時の代金」、「借地権を売却する際にかかった諸費用」、「特別控除」を引くことで求められます。
借地権購入時の代金とは、借地権にかかる費用だけではありません。
・借地権購入時の手数料
・借地に建てた建物の建設費用
・借地権設定のために支払った権利金
・建設した建物の維持・管理費・リノベーション費
上記の金額がすべて含まれます。
また、借地権を売却する際の諸費用については、先にあげた承諾料と解体料以外に、印紙税や不動産会社を利用した場合は仲介手数料も含まれます。
特別控除は、建物を売った時の金額が3,000万円以内の場合に適用される特例です。これらを計算して譲渡所得がプラスになった場合に限り、譲渡所得税がかかります。
また、借地権を身内に譲渡した場合は、譲渡所得税だけではなく相続税がかかります。土地や家を相続する際と同じです。
借地権売却時の土地評価額を出す時には、路線価を用いて計算します。路線価とは、路線(道路)に面する宅地の1㎡当たりの価額のことです。借地が路線価に当てはまるかどうかは、国税庁が出している「財産評価基準書 路線価図・路線倍率表」から確認できます。
路線価が振られていない場合は、「固定資産税評価額×評価倍率」で評価額を算出できます。評価倍率については、「国税庁の財産評価基準書」を参照してください。一般評価額がわかります。
借地権の売却を検討されている方は、不動産会社に相談するのが安心です。ここからは、売却の相談をする際の不動産会社の選び方について解説します。
借地権買取に強い不動産会社に無料査定をお願いすると、契約を行う前に地主の意向を確認し、売却を承諾してくれるように間に入って交渉してくれます。売却を進める前に借地人自身が地主に交渉する必要はありません。
地主との信頼関係があれば、話し合いで解決できる可能性はあります。しかし、専門知識を持たずに交渉するのは危険です。その後、実際に不動産会社に依頼した時に先に話していた方向性と異なる結果となった場合、地主からの信頼を失ってしまうからです。
不動産会社に無料査定をお願いすると、地主と借地人の双方が条件を受け入れたうえで、査定金額を提示してもらえます。先にお伝えしたような、相場の計算方法による曖昧な査定額が算出されることはありません。
地主に承諾を得た実際の売却金額が事前にわかるため、自身で相場から計算するよりも安心して取引を進められます。
専門知識のある不動産会社のフローとなっているため、割合から算出した金額など、すぐに査定額の見積もりだけを提示してくる会社は避けましょう。最初の査定金額と実際の売却金額が大幅に異なる可能性があります。
また、無料査定後に地主への交渉を行っても、場合によっては売却自体承諾してもらえないかもしれません。そうなると、他の不動産会社に相談する必要があるため二度手間となってしまいます。交渉の後に正確な金額を算出してくれる不動産会社に相談するようにしましょう。
不動産会社には専門分野があります。わかりやすいところでいえば、賃貸を取り扱っている不動産会社は売買に弱く、売買を専門としている不動産会社は賃貸物件にさほど詳しくありません。
一言で不動産会社に相談すると言っても、自分の相談したい内容を多く取り扱っている不動産会社に相談するのが最適です。
無料査定を依頼する場合も、借地権売却の実績豊富な不動産会社に依頼するのが安心です。特に借地権の場合は、実績の少ない不動産会社に依頼するとトラブルになりかねません。なぜなら借地権は、売却金額や譲渡承諾料が地主との交渉で決まるからです。
交渉の仕方によっては、借地人が損をする可能性があります。場合によっては売却を認めてもらえず、借地権の売却に失敗するケースもあるでしょう。
実績豊富な不動産会社ならば、状況によって借地人がどのようにすれば得になるかを心得ています。地主との関係も良好なまま、双方にとって最適な条件を提案してくれます。トラブルとなりやすい事例も把握しているため、地主への交渉や第三者への売却時も安心して任せられるでしょう。
借地権を売却する時の不動産会社選びのポイントは4つです。
・実績豊富な不動産会社を選ぶ
・借地権の取り扱いが得意な不動産会社を選ぶ
・無料査定してくれる不動産会社を選ぶ
・弁護士・税理士が在籍している不動産会社を選ぶ
不動産会社ならば、どこに相談しても良いわけでありません。借地権の取り扱いを得意とし、実績のあるところを選びましょう。
また借地権は権利関係が複雑であり、売却時に地主とのトラブルが起こりやすいです。そのため、弁護士・税理士が在籍している不動産会社を選ぶのが安心です。法的な問題や土地資産に関するお金周りに関することは、弁護士や税理士が専門知識を持って解決へと導いてくれます。
借地権は地主への交渉によって、高く売れるかどうかが決まります。売却相場は相続税や固定資産税の評価額で大まかな金額を算出できますが、地主の条件によって金額は異なります。事前に正確な売却相場を算出することは難しいため、売却を検討されている方は不動産会社の無料査定を利用するのが安心です。
ただし、借地権の売却の実績のない不動産会社を選んでしまうと、トラブルになりかねません。借地権は権利関係が複雑なため、実績が高く、借地権の取り扱いを得意とした不動産会社に依頼しましょう。