底地の相続とは、どのようなことを指すのでしょうか。底地とは何か、底地と一般的な土地の相続の違いについて解説します。また、底地を相続する際に必要な手続きについても説明しますので、参考にしてください。
底地とは、借地権がついている土地のことです。借地権とは、その名の通り土地を借りる権利のことです。つまり、第三者に貸し出している土地のことを「底地」といいます。地主が借地人と賃貸借契約を結んで土地を貸し出すと、地主は底地を所有していることになります。
反対に、土地を借りている借地人から見ると、借りている土地は「借地」と呼びます。貸している側から見る場合と、借りている側から見る場合で呼び名が変わるというわけです。
底地は一般的な土地と異なり、借地人が土地を借りて建物を建てている状態にあります。土地を使用している人がいるため、相続後も定期的なメンテナンスや管理をする必要がありません。活用方法に悩む心配がなく、一般的な土地のように新たに借地人を探す手間が省けます。
また、底地を相続すると地代収入を得られる権利も相続できます。土地を相続すると必要になる固定資産税や都市計画税の支払い費用にあてられるため、ランニングコストを抑えられるでしょう。
底地を相続した場合、まずはじめに借地人に相続したことを伝えます。土地の所有者と地主の名義が変わったことを伝え、新たな振込先口座を教えましょう。底地の相続を行う際は、様々な手続きや調べることも多く、バタバタとしてしまいがちです。
しかし、できる限り早く借地人に連絡しておかなければ、亡くなった人の口座は凍結されて使えません。伝える前に元地主の振込先口座に振込が行われると、振込できない問題が生じます。
借地人に相続したことを伝えた後は、土地の相続登記を行います。法務局に所有権移転登記を申請し、登記簿の名義を書き換えましょう。その際、相続人の印鑑証明書や遺産分割協議書や遺言書の準備が必要です。
遺産分割協議書とは、誰がどの財産を取得するかを記入する書類のことです。相続人たちで話し合った末に、遺産分配が決まったことが伝われば問題ありません。
名義変更は、申請後1週間から10日程度で完了します。ただし、不備があると時間がかかってしまうため、相続登記に必要な書類は事前に調べておきましょう。
相続税がかかる場合は、相続税の申告が必要です。相続税の計算は相続税評価額に基づいて計算しますが、自身で明確な数字を計算するのは難しいです。税務署や税理士など専門家に相談するのがよいでしょう。
底地は一般的な土地と異なり、借地人が借りている土地を相続することになります。土地の権利を引き継ぐだけではなく、借地人との関係も引き継がれます。複雑に見える底地の相続は懸念してしまいがちです。ここでは、相続することで得られるメリットについて解説します。
底地は所有しているだけで、継続的に収入を生んでくれるものです。売却が難しくても、持っているだけで価値を生み出してくれます。また、一般的な土地を相続するよりも、相続税対策にもなりコストを削減できるメリットもあります。
一般的な土地を相続したい場合、相続税は大きな負担となりがちです。相続税法の改正により、基礎控除が以前よりも下がったことから相続税の負担は大きくなりました。そうした点から、土地や家が財産として残っていても相続放棄をする方は多いでしょう。
しかし、底地の場合は一般的な土地よりも相続税を軽減できます。なぜなら、底地は更地の土地の相続税評価額から「借地権割合」を引いた分が評価額となるからです。さらに、底地には賃貸している土地に適用される「小規模宅地等の特例」が活用されます。
小規模宅地等の特例では、賃貸している土地を「貸付事業用宅地等」として要件を満たせば200㎡まで50%の評価額を減額できます。
評価額が下がると相続税が減額され、節税になります。うまくいけば、課税対象から外れるため相続税を支払う必要がなく、相続時のコストを削減できます。
底地を相続すると、借地人から地代収入が得られます。地代は契約時に決められた頻度で、決められた費用が借地人から振り込まれます。副業時代の今、安定した収入が得られるのは大きなメリットです。
不動産投資のように、入居者の入り具合によって収益が変動することもありません。マンションやアパートの大家として経営する場合、家賃収入は月や年によって大きく変わるでしょう。
入居者が入らなければ、マンションを維持するための支払い費用の方が大きくなります。場合によっては、突然収入が途絶えて維持費の支払いに追われる羽目になるかもしれません。
しかし、底地による地代収入は借地人が家を建てて住み続けている限りは、一定の収入が継続的に入ってきます。なんらかの事情で引っ越しを余儀なくされない限り、基本的には借地人は何十年も住み続けてくれます。その間、収入が入り続けるため相続する価値はあるでしょう。
また一般的な土地を相続した場合は、土地を維持するための費用や毎年の固定資産税など、コストばかりがかかります。しかし、底地の場合は地代収入を毎年の税金にあてられるでしょう。地代の値段や底地の固定資産税の金額によっても異なりますが、税金を相殺できるメリットもあります。
底地には相続後も収入を生み出してくれるため、財産としての価値があるとお伝えしました。しかし、底地を相続することで得られるのはメリットだけではありません。底地相続ならではのトラブルや問題点が生じる場合もあります。ここでは、実際に考えられるデメリットについて解説します。
底地を相続すると、一般的な土地や家を相続した時と同じように相続税がかかります。底地の相続税は、財産としての価値の際に軽減できるとお伝えしました。しかし、底地によっては特例を使えない場合もあり、評価額が高く負担が大きくなる可能性もあります。
底地の相続税評価額の算出方法は、「自用地評価額×(1㎡‐借地権割合)」で算出します。自用地評価額は、更地の相続税評価額と同義です。路線価に土地の面積をかけ、奥行きや角地などの補正率を乗じて計算します。
借地権割合は、国税庁が公表している相続税路線価図に記号で記載されています。実際に路線価図を見ていただければわかりますが、A~Gと記載されている記号それぞれに、借地権割合の数字が記載されています。例えば、A=90%、B=80%というような表記の仕方です。住宅地の場合は、借地権割合はD=60%と定められる場合が多いです。
また、路線価図の地図上には「500D」というような記載があり、これは路線価と借地権割合を表しています。数字がその土地の価格となり、アルファベットは先程説明したように借地権割合を表すものです。つまり、「500D」という表記は、1㎡あたり50万円の路線価に対し、借地権割合は60%となります。
一般的な土地の場合は、50万円がそのまま1㎡の評価額となるため、底地よりも評価額が高くなります。相続税対策としては底地は評価が低くなる分嬉しい点ですが、売却するとなれば評価額が低く価値が低くなることを覚えておきましょう。
相続した底地を所有せずに、売却を考える方もいるでしょう。しかし、底地は一般的な土地と異なり売却するのが非常に難しいです。なぜなら、一般的な土地のように自由に土地を活用できないからです。底地を購入して取得しても借地人が土地を借りている限りは、新たに建物を建てることができません。
また、底地を購入する際に住宅ローンを組むのが難しい点も購入を遠ざける要因となっています。底地は、一般的な土地のように自由に使うことができず、自用地評価額も低いことから担保にするのが難しいためです。そうした問題点から、底地を購入しようと考える方は非常に少ないのが現状です。
底地買取業者にお願いすれば、買い手を見つける必要がなく売却できます。すぐに手放したい方におすすめの方法ですが、買取相場は更地価格の10~15%となります。底地の売却費用はどうしても安くなってしまうため、売却するよりも所有しておく方が収益性は見込めるでしょう。
底地を相続する際に覚えておきたいのが、借地人とのトラブルが起こりやすい点です。底地は契約関係が難しく、土地は地主のものですが建物は借地人の所有物のため何かとトラブルになりやすいです。
例えば借地人が家を増改築する場合などは、土地に関わる問題のため地主に事前申告しなければなりません。契約時に増改築の範囲が定められているため、その範囲外で無断で増改築を行った場合は契約解除を申し出る必要があります。
相続後、借地契約内容を把握しておかなければ、解釈の違いなどから借地人とトラブルになるかもしれません。
他にも、地代の値上げ交渉時のトラブルもよく見られます。契約年月が古いものだと、契約時の地代では現在の税金などのコストを考えると、地代が安く設定されている可能性があります。相続時に値上げ交渉をする方は多く、その際に借地人が要求を飲んでくれずにトラブルとなりやすいです。
金銭トラブルは当事者同士での解決は関係悪化にもつながりやすいため、不動産業者や税理士などの専門家に入ってもらうのがよいでしょう。
今回の記事では、底地を相続するメリット・デメリットについて解説しました。底地を相続すると、地代収入が得られるメリットがあります。通常の土地を相続するよりも相続税の負担が軽いのも魅力です。
しかし底地は売却しづらい点や、借地人とのトラブルが起こりやすいのが懸念点です。相続するのであれば、売却は検討せずに借地人との契約解消まで所有するのが良いでしょう。