地主として土地を貸していても、地代請求について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
借地人からしっかりと地代を請求するためにも、ここでは地代請求権について解説します。
地代請求権とは、地主が借地人に地代を請求する権利のことです。通常、地主が土地を貸す場合、土地を借りる借地人が対価として地代を支払います。地代の 支払いは年単位、月単位で請求することがほとんどです。
地代金額の設定は、地主が借地人に土地を貸し出す際に双方合意の元で設定します。借地人は地代を支払うことで、地主の土地を使う権利を得られます。
つまり、地代が支払われなくなったら借地人は土地を利用する権利がなくなるということです。
最初に取り決めた頻度で、きちっと地代が支払われていれば問題ありません。しかし、借地人の中には最初は継続して支払っていた人でも、なんらかの理由によって支払わなくなるケースもあります。
毎月・毎年の地代振込を確認していれば、地代の支払い忘れにすぐに気づくことができ、催促もしやすいでしょう。しかし、地主の中には地代の振込を気にしていない人もいると思います。
地代の確認を行っておらず、しばらく経った後に地代が支払われていないことに気づくこともあるでしょう。その場合、地代請求権を行使して借地人に未払分の地代を支払ってもらうことができます。
借地人から地代の支払いが行われていない場合、地代請求権を使って地代請求ができるとお伝えしました。しかし、地代請求には時効があります。時効というと犯罪などの イメージがあると思いますが、ここでいうところの時効は消滅時効のことです。
つまり、地代請求の権利が消滅してしまう期間のことを表します。数ヶ月や1年前のものであれば気にする必要はありませんが、数年間支払われていない、数年間に渡って支払われていない月があったという時 には時効を迎えているかどうか確かめなければなりません。「地代請求するのが面倒」、「今更いいかな」と考えているうちに請求できなくなる可能性があります。地代請求に関する時効期間を知り、権利を行使で きるうちに借地人に請求しましょう。
地代請求権の時効は、基本的には5年間と定められています。しかし、消滅時効の期間には主観的起算点・客観的起算点があり、客観的起算点に当てはまる場合は10年となります。
主観的起算点・客観的起算点の違いは下記によるものです。
主観的起算点:権利行使ができることを知っていたが、行使していない場合(5年)
客観的起算点:権利行使ができることを知らず、行使していなかった場合(10年
この基準を見れば、「請求できることを知らなかった」といえば10年に延びると思われるかもしれません。しかし、借地人と契約を交わす際に地代を支払うことで土地の利用ができる賃借 権の契約を交わしています。契約書を用いて契約を交わしている以上、客観的起算点とは判断されません。
「契約書を詳しく読んでいなくて知らなかった」「相続したため支払いが滞っていることを後で知った」という事情でも適用されません。
知らなかったと判断されるのは、過払い金請求など「余計に支払っていたことを知らずに、相談して初めて知った」というような場合に限ります。そのため、基本的には消滅時効は5年 間と考えておきましょう。
地代請求権の時効は5年で成立します。しかし、時効になっても借地人が裁判所にその旨を主張しなければ時効は成立しません。つまり、借地人がすべてを 無視して何もしないままでいると地代請求権は有効だということです。
以下が時効の採用に関する民法の条約となります。
(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所が これによって裁判をすることができない。
a 参照:「民法|e-Gov法令検索」第百四十五条
援用とは主張するということです。時効を迎えた時、借地人が援用せずに放置していると時効は成立しません。その場合は、裁判所を通じて地代請求権を行使できる可能性があります。
しかし、債権を免れるための権利を得られるため、基本的には援用せずに放置する人はいないでしょう。
地代が滞納された時は、その後の対応が重要になります。借地人にどのような対応をすればよいのか見ていきましょう。
地代の滞納は、地主と借地人のトラブルの中でもよく聞く問題です。地代の滞納が続いてしまうと、地主にとっては死活問題。ただでさえ、借地人に土地を貸した後は自分の物として使えない状態になり地主にとっては不便な状態が続きます。 そのうえ、地代を支払ってもらえないとなると無料で貸している状態になってしまいます。
地主の中には、地代を支払ってもらえていない状態が続いても諦めている人もいます。借地人にいくら支払いを申し出ても未払いが続き、「大事にする方が大変だ」と考えて法的手続きを とらない人もいるでしょう。
それでは、地主が損をしてしまいます。地主が借地人に負けないためにも、地代が滞納された時とその後の対応について理解しておきましょう。特に「相手にも生活があるだろうし」 「困っているかもしれない」と考えてしまう心優しい人ほどしっかり確認してください。
地代が滞納されている場合は、地主の対応としては2通り考えられます。
・地代請求をする
・借地契約の解除を言い渡す
ただし、借地契約は一方的に解除できるものではありません。借地契約の解除が認められるのは、契約書の契約解除項に記載されている滞在期間が超過している場合です。滞納期間が過ぎても支払われず、地代の催告をしても支払いがされなかった場合に契約解除の正当性が認められる可能性が高くなります。
未払いが続き、滞納されているからといって、すぐに借地人を立ち退きできるわけではありません。まずは書面で契約解除催告状を送る必要があります。口頭で「支払いお願いします!」「いつ支払ってもらえますか?」と支払い催促をしていた人も、改めて書面で送るようにしてください。 催告状を送る時は配達郵便証明を利用して記録が残るようにしましょう。
支払い催促と契約解除に関する通知をまとめて記載した方が手間が省けます。また、借地人に対して「支払いを行わなければ、契約解除を考えている」という意思が伝えられます。相手に危 機感を与えられるため、支払いしてもらえる可能性が高いです。
そのため、催告状には具体的に「いつまでに支払ってください。支払いが行われない場合は契約を解除します」という旨を記載しましょう。
地代滞納された時のその後の対応について解説しました。ここでは、実際に借地人から地代を回収する方法を3つのパターンから紹介します。
催告状を送ったにも関わらず、借地人が支払いに応じてくれない場合は法的手段を用いて地代回収ができます。法的手段としては、「不動産明渡請求訴訟」や「建物収去土地明渡 請求訴訟」を行うことになるでしょう。これらが認められれば、借地契約の解除請求と滞納地代の請求が認められます。
法的手段に移るのは、催告状を無視され続けた後に行いましょう。催告状を送った証拠と無視されている現状を伝えれば、訴訟も起こしやすいです。催告を行ったにも関わらず、借地人が応じていない状況がわかれば、信頼関係が破綻していると判断されるためです。
反対に、これらの手順を踏まずに法的措置に出ても、信頼関係が破綻しているかどうかの判断が難しく、訴訟が通らない可能性があります。
借地権の存在によって、地代を回収する方法もあります。それは借地者から借地権を買取、土地を返還してもらう方法です。借地人の合意を得る必要がありますが、
地主から買取を提案した場合、借地人から譲渡承諾料を支払ってもらえます。承諾料は、更地価格の10%が相場です。借地権の買取を提案する場合は、不動産会社に仲介してもらうのが安心です。
失うお金の方が多く感じられるかもしれませんが、地代を支払ってくれる新たな借地人を見つけるか、土地を活用した方が有効的です。
契約解除催告状を送付した結果、借地人が応じてくれた場合は今後も関係性を続けられるように穏便に解決しましょう。まずは借地人が滞納している理由を聞き、今後について話し合ってください。場合によっては、借地人から地代の減額や分割などの交渉がされるかもしれません。未払が続くよりかは、減額や分割でも支払ってもらえる方が良いでしょう。
その場合は、口約束で済ますのではなく必ず合意書や示談書を交わしてください。双方が合意したことがわかるように、証明印も忘れずに押しましょう。減額・分割を取り決めた結果、問題なく支払われ続けるのであれば今後も借地人との関係が続けられます。
地主には地代請求権を行使する権利があります。借地人からの地代の滞納が続いている場合は、適切な流れで地代請求・契約解除を申し出るのが得策です。地代請求権には時効があるので、気付いた今のタイミングから行動に移しましょう。地主が損をしないためにも、地代はしっかりと回収してください。何をすればいいのかわからない方は、不動産会社に相談するのも一つの方法です。