借地権譲渡とは、借地権を別の人に譲り渡すことをいいます。借地権を譲渡する場合、地主からの了承を得なければなりません。
また、借地権の譲渡の際には借地上の建物の所有権の移転も行われます。
ここでは、借地権譲渡の一般的な流れや事例、借地権の取引相場と価格について見ていきましょう。
借地権譲渡は、以下のような流れで行われます。
1.借地権の不動産売却査定を行う
2.借地権専門の不動産会社に相談する
3.業者と共に地主に交渉する
4.買主と売買契約を締結する
5.地主と借地権譲渡承諾書を締結する
6.所有権移転登記を行う
一般的には以上の流れで借地権の譲渡は完了です。
借地人のAさんはある土地の借地権を保有して工場を営んでいましたが、廃業に伴い借地権付きの建物の処分を希望していました。まずは借地権の不動産売却査定を行い、 760万円の売却価格で不動産業者が仲介することになりました。
地主のBさんと交渉したものの、承諾を得られず、さらには150万円ほどの承諾料を要求してきました。そのため、業者は裁判所に借地非訟を申し立てし、承諾料を100万円、新しい地代 を月額36,000円から17,000円にしてもらう希望をしました。
その結果、Bさんは借地非訟だと分が良くないことを理解しました。また、借地人のAさんも借地非訟のための弁護士費用を負担しなければならないことも考えて、最終的にに承諾料 150万円を支払いました。そして、新しい地代を月額17,000円にすることで解決し、買主へと無事借地権が譲渡されて解決です。
借地権には明確な取引相場や価格はありません。
これは、以下のような内容が関わってくるため、一概にはどのくらいの価格で取引できるのかが変わってくるからです。また、売却条件も地主によって変わってきます。
・自用地評価額
・借地権割合
・所在地
・周辺環境
・用途地域 など
ただ、自用地評価額と借地権割合を調べれば、大体の成約価格の目安を知ることは可能です。
続いて借地権譲渡に必要な条件と手順について見ていきましょう。
続いて借地権譲渡に必要な条件と手順について見ていきましょう。
借地権譲渡をするには、原則として地主の承諾が必要です。
地主からの承諾を得られない場合、裁判所の許可を得ることで借地権譲渡をすることが可能になります。もし、無断で譲渡すると借地契約が解除される恐れ もあるため、無断での譲渡は絶対にやめましょう。
最初のステップは、借地権の不動産売却査定です。この時、複数の不動産会社に問い合わせて売却査定をすることをおすすめします。
複数社から不動産売却の価格を提示してもらうことで、自分が所有する不動産の相場価格を知ることが可能です。
次に、借地権に関して知識が豊富な不動産会社に借地権譲渡の相談をしましょう。借地権は法律などが複雑に絡んでくるため、借地権に関して詳しい不動産会社を探すことが大切です。
借地権専門の不動産会社を探せたら、その業者と共に地主への交渉に移ります。
業者と共に交渉に伺うことで、地主とのスムーズなやり取りを進めることができます。自分だけで地主へ交渉に行くと、譲渡を断られたり、地主と関係が悪化したりといったリスクがあ るため、自分だけで交渉に行くのは避けましょう。
地主の了承を得て、買主が決まったら売主との売買契約を締結させましょう。
売買契約時には、不動産会社へ仲介手数料を支払う必要があります。また、契約書には印紙を付けなければなりません。
仲介手数料は、買主が全額負担するか売主・買主で折半するかのどちらかのケースがあるため、前もって不動産会社に確認しておきましょう。
その後は、不動産会社が用意してくれた借地権譲渡承諾書を地主と締結します。尚、借地権譲渡の承諾をするかわりに地主から承諾料を請求されることもあるため、いつまでに支払うのかははっきりと確認しておいてください。
最後に、司法書士に依頼して所有権移転登記を行って、借地権譲渡の手続きは完了です。
所有権移転登記は、買主が費用負担してくれることが一般的です。売主は、署名捺印の準備・印鑑証明書などの書類準備をします。
借地権譲渡で重要になる書類には以下のようなものがあります。
・借地契約書(土地賃借契約書)
・地代の支払いが証明できる書類(領収書など)
・借地上にある建物の借地人名義の権利書(登記済証)
借地契約書とは、借地権者と地主の間で土地の賃借契約を交わした契約書のことです。
万が一、契約書を無くしてしまっても、以下の2つがわかれば借地権の譲渡はできます。
・地代の支払いをしているという証明
・借地上の建物が借地権者名義で登記されているという証明
地代の支払いは、領収書や振込通知書で証明が可能です。
また、建物の登記は、法務局で調べることができます。ただし、登記されていない場合、借地権の譲渡ができないため、急いで借地権名義での建物登記を行う必要があります。
借地権の譲渡では、地主へどのように交渉するのかが重要になってきます。
ここからは、地主への交渉の際のポイントや注意点などについて解説していきます。
借地権の譲渡を、地主が100%了承してくれるというわけではありません。時には断られることもあります。地主に譲渡についての承諾を得たい場合、慎重に行動しなければなりません。
地主に断られないためにも、以下のポイントに注意して話し合いをしましょう。
・地主の承諾条件を確認する
・不動産を売ることを早めに伝えておく
・早いうちから専門業者に仲介を依頼する
地主との話し合いの中で、売却を了承する代わりに交換条件を提示してくることがあります。
条件の中で良くあるのが、過去の更新料を支払って欲しいといった金銭面での条件です。
この時、安易に了承せずに弁護士や不動産会社に相談してから結論を出すようにしましょう。
また、不動産を売却するつもりであることを早めに伝えることも重要です。
地主との関係性を日頃から良好にしておくことも大切で、一方的な主張をするのは避けてください。
借地権の交渉は、自力で話し合いを進めるのではなく必ず専門業者に相談して仲介を依頼するようにしましょう。自分で話し合いを進めて、地主との 関係性を悪くしてしまう恐れもあるため、専門業者への早めの相談は大切です。
借地権譲渡の際の地主への交渉の際には、自分たちだけで交渉に行くと、不利な条件を要求されることもあります。
借地権の譲渡に関して詳しい業者に必ず仲介してもらい、共に交渉にしてもらうようにしましょう。
買取請求は、借地人が地主に対して、借りている土地に建築している建物の買取を依頼する権利のことです。
例えば、借地人が借りている土地に建物を建てて利用していたところ、契約満了になったとします。
契約の更新を希望したにも関わらず地主に断られた場合、買取請求によって借地上にある建物を地主に買い取ってもらうように請求することができます。 地主によっては買取請求を拒否したいと考える人もいるでしょう。
しかし、借地人が買取請求権を行使した場合、拒むことはできません。
ただし、借地人が買取請求を行使するには、借地人が建てた建物が残っていることや、借地権の契約が満了になるタイミングでなければならないなど、一定の条 件があるため、条件に合うかどうかを確認しておきましょう。
地主によっては、借地権の譲渡を頑として断ってくることもあります。
この場合、借地人は、借地非訟という手続をして、裁判所に申し立てをすることも可能です。
地主の承諾に代わる許可を、裁判所に求めることができます。
ただし、借地非訟を申し立てる際には、「不動産を売る前であること」・「売る相手が既に決まっていること」・「借地上に建物があること」の3つの条件が満たされている必要があります。
この3つの条件を満たしていない場合は申し立てすることができません。
借地非訟の申し立てが受理されたら、裁判所で地主と借地人総合の意見を聞いて解決方法が決定されます。裁判所の決定した内容に不服があれば不服申し立ても可能です。
地主は借地権の譲渡を拒否することができるため、上記のように裁判所に申し立てて解決方法を見出すこともあります。
借地人は、無理に自分で交渉することはせずに、借地権に詳しい専門家に必ず相談しながら交渉を進めるようにしましょう。