まずは共有不動産について簡単におさらいします。
土地や建物などの不動産を複数の名義で所有するのが「共有不動産」。 そして共有持分とは、各人が持つ共有不動産の割合のことを指します。 例えば、夫婦で共有している家や土地、兄弟で共有している相続財産などが該当します。
共有持分は、名義や登記簿に記載されるもので、それぞれの持分に応じて権利や義務が分配されます。 たとえば、2人が50%ずつ持分を持っている場合、それぞれが50%の税金を負担することになります。 不動産の売買や相続、贈与の際には、各人の持分に応じて税金が発生し、納税義務が生じます。
では、具体的な課税タイミングと税金の種類を見てみましょう。
共有持分の課税は、不動産を
・取得した時
・所有している時
・譲渡(売却・贈与)した時
の各タイミングで行われます。
【取得】【所有】【譲渡(売却・贈与)】のタイミングでかかる税金をそれぞれ見ていきましょう。
■【取得】でかかる税金
・登録免許税
共有持分の取得・変更などに伴う登記手続きにかかる税金です。
・贈与税
不動産の贈与や相続によって共有持分が移動した場合、相続税や贈与税が適用されます。
・不動産取得税
土地や建物を購入したり、贈与などで不動産を取得したときにかかる税金です。
登記をしていなくても課税されます。
■【所有】でかかる税金
・固定資産税
不動産を所有している人が支払わなくてはならない税金です。この税金は、土地や建物の価格に対して課税されます。
・都市計画税
都市計画区域内にある土地や建物にかかる税金で、都市の発展を支えるために課せられます。
■【譲渡(売却・贈与)】でかかる税金
・譲渡所得税
共有持分を持つ不動産の売買によって発生する利益に対して所得税が課税されます。短期(5年以内)と長期(5年以上)の売却で税率が異なります。
・住民税
その市区町村(都道府県)に住む人に課せられた地方税です。
共有不動産の場合、これらの税金は共有持分に応じて分担されます。
では、それぞれのタイミングで課税される税金について、どのように節税すればよいかをみていきましょう。
共有持分の取得で利用できる具体的な制度としては「住宅ローン控除」「【新築時】認定住宅等新築等特別税額控除」「【贈与時】相続時精算課税制度」「【贈与時】配偶者控除」の4つが挙げられます。 それぞれ見てみましょう。
住宅ローン控除は、住宅ローンの利子を一定額まで所得税から控除できる制度です。
住宅ローン控除を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
- 個人名義で住宅ローンを借り入れること
- 住宅を新築・増築・改築または中古住宅を取得すること
- 所有者本人または配偶者が住宅に居住すること
この制度が適用される期間は最大10年間で、控除額は年間で最大100万円までです。
ただし、所得水準や借入金額などによって、控除額や控除期間が変動することがあります。
これは新築住宅を購入した場合に利用できる税制措置です。
認定住宅等の新築に要する取得費から一定の控除が適用され、取得税額が軽減されるメリットがあります。
この制度を利用するためには、取得する住宅が国税庁の定める基準に適合したものであることや、一定の面積が確保されていることなどの要件を満たす必要があります。
これは贈与を受けた場合に適用される税制です。
この制度は贈与により財産が移転された場合に、相続が発生した時点での税額を精算することを目的としています。具体的には、贈与を受けた人がその後相続を行う際、贈与を受けた時点での財産の税額と相続が発生した時点での税額の差額を精算し、その結果に基づいて税金を納付することになります。
配偶者控除は、配偶者から贈与を受けた場合に適用される税制です。
この制度は、夫婦間で財産を移転する際の税負担を軽減することを目的として導入されました。
ただし、この控除を受けるためには、贈与を受ける配偶者が一定の要件を満たしている必要があります。
適用条件や手続きについては、税理士や専門家に相談することで詳しい情報を得ることができます。
共有持分の所有で具体的に使える制度として、「認定長期優良住宅に関する特例措置」と「中古住宅の個人間売買の消費税」が挙げられます。それぞれ見てみましょう。
これは、住宅の品質や性能が一定の基準を満たし、国から認定された住宅に対して、いくつかの税制上の優遇策が適用される制度です。
具体的には次のようなメリットがあります。
- 取得時に適用される登録免許税と不動産取得税が軽減される
- 居住用不動産の固定資産税が3年間軽減される
- 土地の評価額が都市計画税の対象から除外される
これらの特例措置が適用されるためには、認定要件に該当することが必要です。
認定要件には、耐震性能や断熱性能、居住性能、耐久性などが求められることが一般的です。
また、認定長期優良住宅には新築住宅だけでなく、一定の要件を満たす中古住宅も対象となるため、築年数が経過した住宅でも特例措置を利用することができます。
中古住宅の個人間売買においては、消費税がかからない場合がほとんどです。
これは、個人間での売買であるため、事業用ではなく消費税の対象とならないとされるからです。
ただし、売主が法人の場合や個人が業者として登録している場合は、消費税が発生することがあります。
また、不動産の取得にかかる登録免許税や不動産取得税は、個人間売買であっても課税対象となりますので注意が必要です。
中古住宅の売買においては節税や費用削減の面で有利な面が多いため、購入検討者にとって魅力的といえます。
共有持分の売却において利用できる税制メリットとして、譲渡所得に対する一定の控除が挙げられます。
これにより、売却による所得税や住民税の負担を軽減することができます。
具体的な節税術としては、「3,000万円控除」「居住用不動産の売却時の軽減税率」「相続した空き家の売却時の特例」の3つが挙げられます。
それぞれ見てみましょう。
3,000万円控除は、自宅を売却する際に適用される税制措置です。
具体的には、自宅の売却による所得に対して3,000万円の控除が適用されることで、所得税や住民税の負担を軽減することができます。
この制度を利用するためには売却対象となる物件が自宅であることや、所有期間が一定以上であることなどの条件を満たす必要があります。
適用条件や手続きについては、税理士や専門家に相談して確認しましょう。
居住用不動産の売却時に適用される軽減税率は、所得税や住民税の負担を軽くする制度です。
この制度の目的は住宅取得を促進し、不動産市場を活性化させることです。
具体的には、売却益が一定額以下の場合、所得税の税率が通常の15%から5%に低下し、住民税の税率も9%から4%に軽減されます。
この制度を利用するためには、いくつかの要件があります。
まず、売却する不動産が自分の居住用であること、また、売却前に一定期間居住していたこと、売却後も引き続き新築または中古の住宅を取得することが必要です。
さらに、所得による制限があり、一定の所得以下の方しかこの制度を利用できません。
この軽減税率制度は、住宅ローンの長期化や不動産価格の高騰による負担を軽くし、住宅取得をサポートする効果があります。
不動産売却を検討している方は、この制度のメリットを参照し、適用条件を確認しておくことが大切です。
相続した空き家の売却時の特例は、相続税の負担を軽減するための制度です。
この制度は、相続した空き家を売却し、その売却代金を他の資産への相続税の納付に充てることができる場合に、相続税の課税評価額を一定割合で減額するものです。
この特例を利用するためには、まず、相続した空き家が都市計画区域内にあることが求められます。
また、空き家の状態が優良であることや、売却後一定期間以内に新築または中古の住宅を購入することが条件になります。
さらに、売却代金を相続税の納付に充てることや、売却後の居住計画を立てることも必要です。
相続した空き家の売却時の特例は、相続税の負担を軽くすることで相続財産の売却や資産取得の機会を増やす効果があります。
共有不動産の課税に関して負担が軽くなる制度をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。 共有不動産の場合はそれぞれの納税タイミングに合わせて全員が協力して行う必要があるため、これらの制度を共通認識として持っておいて損はありません。
後から後悔しないよう、使える制度を予め把握しておくことをお勧めいたします。