共有持分には、さまざまなリスクが伴います。特に兄弟間で実家などの不動産を共有している場合、意見の相違や生活状況の変化がトラブルの原因になりやすいです。
共有持分の状態を続けることで、将来的に解決が困難な問題が発生する可能性もあります。そこで、共有持分の主なリスクとその回避方法について見ていきましょう。
共有持分では、契約の自由が制限されます。たとえば、実家を売却したい場合でも、共有者全員の同意が必要となり、一人でも反対する者がいれば売却はできません。
また、貸し出しやリフォームなどの決定も、全員の合意が必要です。このような制約により、兄弟間で意見が対立すると、物件の有効活用が困難になることがあります。
加えて、経済状況や人生計画が異なる兄弟がいる場合、意見の一致を見ることが難しくなりがちです。その結果、不動産の価値が下がるリスクもあります。
共有持分の状態を続けることで、結局は兄弟全員の利益が損なわれる懸念もあるでしょう。
共有持分のもうひとつのリスクは、管理負担の偏りです。実家の維持管理には、定期的な清掃、修繕、固定資産税の支払いなど、さまざまな負担が伴います。
共有状態では、これらの責任も共有されますが、実際には住んでいる人や近くに住んでいる人が多くの負担を担うことになるかもしれません。
このような状況は、特に共有者の中に高齢者がいる場合に顕著です。加えて、共有者の一部が管理費用を支払わない場合、ほかの共有者がその分を負担することになり、不公平感が生じます。
さらに、共有者間のコミュニケーション不足や関係の悪化が、管理の適切な実施を妨げることもあるでしょう。結果として、不動産の価値が低下し、共有者全員の利益が損なわれる可能性があります。
このような管理負担の偏りを避けるためには、共有持分の状態を解消するか、管理責任を明確にすることが賢明です。
兄弟で実家を相続する際、共有名義になるケースは少なくありません。この状況は、遺産分割協議の結果や協議がまとまらない場合などに発生します。
共有名義は一見平和的な解決策のように見えますが、後にトラブルの原因となることも多いです。そこで、共有名義になる主なケースと、その対処法について理解することが欠かせません。
遺産分割協議の結果、共有名義になることがあります。兄弟が実家を含む不動産を相続する際、それぞれの持分を定める遺産分割協議を行うものです。協議の結果、兄弟が共有者として不動産を所有することになる場合があります。
この場合、共有者それぞれが不動産の一部を所有することになり、相続登記も共有名義で行われるでしょう。共有名義にはトラブルのリスクもあるため、将来的な問題を避けるためには、共有名義を解消する方法を検討することが重要です。
遺産分割協議をしていない場合も、兄弟で実家を共有名義で相続することがあります。相続が発生した際、相続人が遺産分割協議を行わずに相続登記を行うと、相続財産は法定相続分にもとづいて共有名義となるものです。
この状態では、共有者の一人が不動産を売却したい場合でも、ほかの共有者の同意が必要となり、トラブルの原因となることがあります。
また、共有者の一人が亡くなると、その持分はさらに相続され、共有者が増える可能性も否めません。そのため、遺産分割協議を行わずに共有名義の状態を続けることは、将来的なトラブルを増幅するリスクがあります。
共有状態を避ける主な方法としては、次の4つが挙げられます。
個別に見ていきましょう。
共有者全員の合意を得て不動産全体を売却することにより、共有者間の利益を公平に分配できます。しかし、共有者全員の合意を得ることは、特に共有者が多い場合には難しい場合も多いです。
合意が得られない場合には、裁判所に共有物分割請求を行い、裁判所の判断によって売却を進めることも可能です。また、不動産全体を売却する場合には、通常の不動産売却と同様の手続きが必要になりますので、不動産会社や専門家との連携が重要です。
共有名義の土地を単独名義にする方法のひとつとして、土地の分筆による現物分割があります。分筆とは、一筆の土地(一筆とは登記上の土地の個数の単位で、 独立した土地を一筆の土地と呼ぶ)を複数に分けて登記することで、共有者全員の同意が必要です。。
分筆によって共有者それぞれが、独立した土地を所有することができるようになります。それぞれの土地に異なる地目を設定でき、部分的に柔軟な土地の活用が可能です。
分筆を行う際には土地家屋調査士に相談し、法務局や役所での調査、現地確認、分筆案の作成、境界標の設置などの手続きが必要となります。
なお、分筆費用は、測量、境界標設置、確定図の作成、登記申請などにかかる費用や登録免許税が含まれ、土地の広さや境界が確定しているかなどによって異なりますが、一般的には20万円以内から100万円以上と幅広いです。
分筆においては、地形が悪くなる、使い勝手が悪くなる、土地の条件に差が生じる、固定資産税が上がるなどのデメリットも存在します。また、境界が確定していない場合や、地区計画による最低面積の制限がある場合などは分筆ができません。
分筆による現物分割は、共有名義の土地を効果的に管理し活用するための選択肢のひとつですが、メリットとデメリットを十分に検討し、必要な手続きや費用を把握した上で進めることが重要です。
共有持分を手放したい共有者に、それを取得する共有者が代償金を支払う分割方法が価格賠償です。事実上の、共有者による共有持分の買取になります。判例で認められている、正当な共有物分割の方法のひとつです。
価格賠償には「部分的価格賠償」と「全面的価格賠償」があります。
前者は、現物分割で共有不動産を分けた際の過不足の調整で代償金を支払う方法です。後者は、共有不動産をひとりの共有者の単独所有ないし複数人の共同所有とし、共有持分を取得した共有者がほかの共有者に代償金を支払う方法となります。
共有持分と引き換えに代償金を受け取るので売却、相手からすれば買取したのと同じ結果になります。実際に、共有持分の買取に関して価格賠償といえば、「全面的価格賠償」を指すことが一般的です。
共有持分を持つ土地の処分方法のひとつとして、専門の買取業者への売却があります。この方法は、分筆が困難な場合や共有者間での合意が得られない場合に有効です。
共有持分専門の買取業者は、分筆できない土地の共有持分でも買取を行うため、処分に困っている持分所有者にとっては解決策となりえます。
買取業者を利用するメリットとして挙げられるのは、スムーズに売却が進められることや、共有者とのトラブルを避けることができる点などです。また、専門業者であれば、通常では扱いにくい土地の価値を適切に評価してくれる可能性が高いでしょう。
ただし、買取業者を選ぶ際には、信頼できる業者であるかどうかを慎重に検討する必要があります。業者の実績や評判、買取価格の適正性などを確認することが重要です。
買取には、無料査定を利用して共有持分の価値を見積もり、売却に向けたアドバイスを受けることから始めます。買取価格に納得した場合は、正式な契約を結び、手続きを進めましょう。
売却後は、共有持分に関する権利や義務から解放され、土地の管理や利用に関する懸念を解消できます。専門の買取業者への売却は、共有持分の処分方法として検討する価値がありますが、業者選びや買取条件などにくれぐれも注意が必要です。
また、共有者間での話し合いを通じて、ほかの解決策と比較検討することも忘れてはなりません。
共有名義の土地は、契約の自由が制限されたり、管理負担が偏ったりするなどのリスクを伴います。共有名義になるケースとしては、遺産分割協議の結果や遺産分割協議を行わない場合です。
共有状態を避ける方法として、共有者全員の合意で不動産全体を売る、土地の分筆による現物分割、共有持分をほかの共有者に売る、共有持分を専門の買取業者へ売却するなどの選択肢があります。
土地の分筆による現物分割は、共有名義の土地を単独名義に変更する効果的な方法のひとつですが、共有者全員の同意が必要であり、分筆によるデメリットも考慮する必要があります。
共有持分を専門の買取業者へ売却する方法は、分筆が困難な場合や共有者間の合意が得られない場合に有効ですが、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
共有名義の土地を管理し活用するためには、共有持分のリスクを理解し、適切な解決策の選択が不可欠となります。また、専門家のアドバイスを受けながら、共有者間での話し合いを通じて合意に至ることが望ましいです。