底地の買取相場は、さまざまな要因によって左右されます。底地の価値は、更地の価格の1割程度というのが一般論です。
しかし、借地人が買い取る場合は更地価格の5割程度まで上昇することも珍しくありません。ここでは、底地の買取相場に影響を与える要素とその評価方法について見ていきましょう。
底地の買取相場を左右する主な要素には、地域や立地条件があります。都心部や交通アクセスの良い場所にある底地は、郊外や不便な場所にあるものよりも価格が高くなる傾向が顕著です。
また、借地権の種類や契約内容も、相場に深く関係します。定期借地権や普通借地権などの、借地権の種類によって底地の価値は変動するものです。契約期間が長いほど、また、地主が建物を買い取る特約が付いている場合は、価格が上がります。
底地の形状や面積も、買取価格に無縁ではありません。正方形や長方形の整形地は価値が高く、不整形地や狭小地は価格が下がることがあります。大きな面積を持つ底地は、分割して利用できるため、高価格で取引されることが多いのです。
さらに、底地の利用可能性や将来性も相場に影響を与えます。たとえば、建築基準法の規制によって建物の建設が制限される場合や、将来的に開発計画がある地域の底地は、価格が高くなる要素を持つわけです。
底地の価値を正しく評価するためには、専門的な知識が必要です。不動産鑑定士による鑑定評価や、専門の買取業者による査定が一般的な方法とされています。
査定時には底地の立地条件、形状、面積、利用可能性などが詳細に検討されるのが一般的です。これらの要素を総合的に評価することで、適正な買取価格が算出されます。
また、市場動向や近隣の取引事例も重要な判断材料です。地域による価格の違いや、最近の取引価格を参考にすることで、より正確な査定ができます。
最終的な査定価格は、地主と買取業者との交渉によって決定されるものです。相場にもとづきながらも、双方が納得する価格での売買が望ましいです。
借地人が存在する底地の主な売却方法には、以下の4つがあります。
個別に見ていきましょう。
借地人に底地を売却する方法は、シンプルでトラブルが少ない方法です。借地人と地主が合意すれば、スムーズに売却を進めることがでます。
借地人にとっては土地を所有することで、建物の建て替えや修繕がしやすくなるでしょう。
ただし、借地人が購入資金を用意できない場合にはこの方法は使えません。また、一旦購入した借地人の転売により、地主が望まない第三者に所有権が移転する可能性も否めません。
借地人に売却する際のポイント
参考:Q:借地人に底地を買ってもらいたい|日本不動産鑑定士協会連合会
民法上は、底地を借地人の同意なしに売却することは可能です。つまり、借地人の購入意欲に左右されずに、より高い売却価格が期待できます。
ただし、法的には同意が必要なくとも、借地人とトラブルになる可能性は少なくありません。また、借地人の買取請求権や地代の減額請求権の行使などのリスクもあります。
第三者に売却する際のポイント
地主と借地人が、それぞれ所有する底地と借地権を同時に売却する方法です。土地の所有権を一体化することで、買主にとっては、手続が簡便になるうえ、土地の有効活用がしやすくなります。
ただし、地主と借地人の完全なる合意が必要です。その結果、売却価格の決定が複雑になる可能性があります。
地主と借地人が底地を同時売却する際のポイント
借地人や第三者などの民間人、あるいは企業などに売却するのではなく、直接不動産業者に売却する方法です。売却プロセスはほかの方法に比べて遥かにシンプルで、スピーディに完結します。
すぐに現金化できて、後々の心配がないという大きなメリットがあります。ただし、一般的に不動産業者による買取は、価格が安くなるというデメリットも否定できません。
とはいえ、買取専門の業者、とりわけ底地の取り扱いを得意とする専門業者であれば話は違います。少なくとも、ほかの業者よりも適正価格に近い取引が期待できるでしょう。
買取業者に売却する際のポイント
底地を相続する際には、相続税の評価額の算出や税金の支払いが重要なポイントとなります。特に、底地の相続税評価額は時価と異なる場合が多く、適切な評価が欠かせません。
また、相続税の支払いには物納という方法もあります。ここでは、底地の相続税評価額の算出方法と物納による相続税の支払いについて解説します。
底地の相続税評価額は、更地の相続税評価額に底地権割合を乗じたものとなります。底地権割合の計算式は以下のとおりです。
底地権割合(%)=1-借地権割合×100
借地権割合は、相続税路線価図に記号(下図を参照)で定められている数値となります。
記号 | 借地権割合 |
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
住宅地の場合、借地権割合は表のDの60%で定められていることが多いです。
相続税の計算における借地権は、権利金の支払の有無や実際の地代の金額設定などで変わります。一般的な借地契約で権利金の支払があるケースでは、借主側での借地権の評価額は「自用地評価額×借地権割合」というシンプルな式で算出可能です。
権利金の支払がない場合には、本来は土地全体の賃料として「相当の地代」を支払う必要があります。しかし、必ずしも実際に支払っている地代が、相当の地代よりも高く設定されているとはかぎりません。
その場合、借地権の評価額は実際に支払う地代に応じて異なります。
参考:財産評価基準書|国税庁
物納とは、相続税を現金ではなく不動産などの財産で支払う方法です。この方法を利用すると、現金での支払いが困難な場合でも相続税を支払うことができます。
物納にはいくつかの条件があり、物納できる財産の種類や評価額、手続の方法などの詳細な条件は、国税庁のWebサイトなどで確認できます。
また、物納を利用する際には、事前に申請が必要です。申請に必要な書類や手続の詳細は、税務署に問い合わせることで確認できます。
底地の相続税評価額は借地権割合にもとづいて計算され、時価よりも高くなることが多く見られます。そのため、生前に売却することが相続税対策として有効な選択肢です。
底地を売却することで、相続税評価額を圧縮し、相続税負担を軽減できる可能性があります。加えて、底地を売却して現金化することで、相続税の納税資金の確保が可能です。
特に地代が十分にもらえていない場合や地代が滞納されるケースでは、売却による現金化が相続税対策として有効となるでしょう。
なお、底地を相続する際には、借地人との関係を解消しておくことがトラブルを事前に防ぐためには欠かせません。相続発生前に借地人と話し合い、売却に向けての協力を得ることが重要です。
買取専門業者に底地を売却するメリットのひとつは、スピーディに現金化できることです。さらに、買取専門業者に売却する際は、借地人との直接の交渉が不要であるため、精神的な負担もかからずに済みます。
業者に任せることで、借地人との関係が複雑な場合でもスムーズに売却が進められるでしょう。また、買取専門業者は底地の専門知識を持ち、取り扱いにも長けているので、相場に照らした適正価格での買取が期待できます。
底地の買取相場や売却方法、相続税対策について理解することは、底地を適切に管理し、効果的に活用するために重要です。底地の特性を考慮した適切な対策を講じることで、将来のリスクを回避し、資産価値を最大化できます。
底地の相続税評価額は時価よりも高くなることが多いため、生前に売却することが相続税対策として効果的です。売却によって相続税負担を軽減し、納税資金を確保できます。
底地の売却は相続税対策のひとつとして有効ですが、借地人との関係解消や買取業者の選定など、事前に検討すべきポイントがあります。相続発生前に適切な対策を立てることが重要です。
底地の取り扱いを得意とする買取業者に底地を売却することには、スピーディな売却や手間の省略、比較的高価な買取などのメリットがあります。ただし、底地の価格はエリアや借地条件によって異なるため、複数の業者から見積もりを取りましょう。
また、底地の取引や相続に関する法律や税制は変更されることがあるため、常に最新の情報を把握しておくことが重要です。信頼できる専門業者の選定によって、後悔のない適切な売却が可能となります。